このブログを読めば、自毛植毛に向いていない脱毛症や自毛移植に慎重になった方がよい人について知ることができます
このブログは年間800件の手術をこなす外科医によるアフィリエイトブログです。医師と患者の立場からAGA治療の正しい情報を追求していきます。
黒髪先生自毛植毛は、AGAで薄くなった生え際や前頭部に、AGAの影響を受けにくい髪を再現できる夢のような治療です。



だから、自毛移植を受ける人が増えています。



でも期待して治療に臨んだのに、治療する前より悪くなってしまったらどうしますか?



後悔を通り越して絶望します。



現実に起こりうることなんです。



どんなに高い技術と経験があっても良い結果が出ない、それどころか、もっと悪くなってしまうケースがあります。



後悔しないために知っておきたい⑤として、自毛植毛に向いていない人に光を当てます。
自毛植毛を受けてはいけない人
原則としてAGA以外の脱毛症には自毛移植は向いていません。
絶対に受けてはいけない脱毛症もあります。
AGA以外の脱毛症は、何があるでしょう?
大きく分けると
- 非瘢痕性脱毛症
- 円形脱毛症
- 膠原病性脱毛症
- 薬剤性脱毛
- その他
- 瘢痕性脱毛症
瘢痕性脱毛症は、ケガややけどなどにより、皮膚そのものが瘢痕化、言い換えると線維化して、毛を生やす土壌が砂漠化するとお考え下さい。
非瘢痕性脱毛症は、皮膚という土壌は毛を生やす力は保たれているが、毛包がダメージを受けて毛を生やせなくなっているとお考え下さい。
非瘢痕性脱毛症
頭皮は栄養が通っていて毛を生やす力はあるが、毛を生やす毛包が自己免疫や薬剤障害により傷み毛を生やせない病気の総称です。
円形脱毛症や膠原病などの自己免疫性疾患、抗がん剤などの薬剤性脱毛などが知られています。
頭皮は毛を生やす環境を保っていますので、毛包への攻撃が止めば、再び毛は生えてきます。
このため、まず脱毛の原因となっている病気そのものの治療が重要です。
それでも治療の効果が乏しく治りにくい場合は、自毛移植にすがりたくなるかもしれません。
それでも、特に自己免疫性疾患は、手術ストレスがトリガーとなり、炎症が悪化してさらに脱毛が広がるリスクがあるため、適応とはなりません。
自毛移植を考えるときは、詳しい問診やマイクロスコープによる 頭皮の詳細観察を行い、AGAと非AGA脱毛の鑑別診断を正確に行うことが求められます。
円形脱毛症
円形脱毛症は、世界的に1000人に1人がかかる病気です。
多くの患者は30歳以下で発症します。
自分のリンパ球が成長期にある毛の毛包を攻撃して脱毛させると考えられています。
つまり、自己免疫疾患です。
肉体的・精神的ストレスが発症トリガーになると考えられています。
75%の人は、軽症で円形の脱毛斑ができる程度なので「円形脱毛症」という医学名になっています。
こうした軽症の人は、1年以内に治るとされています。
なので、軽症では円形脱毛があるから自毛移植というのは意味がありません。
問題は、重症例の場合です。もう円形とは呼べないくらい広い範囲に脱毛斑が拡大していきます。
塗り薬や内服薬が用いられますが、脱毛の範囲が広い人ほど治りにくいことがわかっています。
成人では脱毛面積が25%未満の場合68%が、50%未満の場合には32%が回復するが、より広範囲の脱毛面積の場合は回復率はわずか8%であった。
しかし、円形脱毛症で治りが悪くとも、自毛移植はおこなっはいけません。
その理由は2つあります。
- 自毛植毛の採取と移植という2つの外科的侵襲によるストレスが、さらに脱毛症を悪化させるトリガーになるリスクがある
- そもそも毛包が自己免疫で攻撃されて脱毛する病気なので、生着した植毛も攻撃されて抜けてしまうリスクがある
(参考文献)Alopecia areata: a review on diagnosis, immunological etiopathogenesis and treatment options
膠原病性脱毛症
膠原病は、しっかりした定義がないのですが、発熱などの全身症状を伴う、いくつかの臓器にわたって炎症が起きる、良くなったり再発したりを繰り返す、さまざまな自己免疫異常がみられる、などの特徴を持つ疾患群をさしています。
そのうち、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、皮膚筋炎、全身強皮症などが脱毛症の原因となることがあります。
円形脱毛症と同じく炎症をベースにしている病気ですので、自毛移植にともなう外科的侵襲は、炎症を増強し、脱毛症がさらに進んでしまうリスクがあります。
薬剤性脱毛、その他
さまざまな薬剤の副作用としての脱毛症が生じることがあります。抗がん剤による脱毛はよく知られています。
抗がん剤の場合は、命にかかわるがんの治療が最優先ですので、計画通り抗がん剤治療を完了させることが大事です。
抗がん剤治療が完了すれば、頭皮という土壌と幹細胞は保たれているので、毛は生えてきます。
抗がん剤治療中は、ウィッグで乗り切りましょう。
このように薬剤性脱毛は、自毛移植の対象ではありません。
その他
他にも、牽引性脱毛症、真菌感染症、過度の身体的ストレス、栄養障害などさまざまな原因があります。
ほとんどは、原因を取り除くことで解決します。
瘢痕性脱毛症
原因を取り除いただけで解決しないのが瘢痕性脱毛症です。
瘢痕性脱毛は、けがやヤケド、手術による頭皮切開、化学物質暴露などにより、頭皮が瘢痕化して毛を生やせなくなる脱毛症です。
瘢痕化とは何か?
たとえば、皮膚が深く切れたとき身体は命を守るため傷をふさぐことを最優先します。
つまり、線維組織で埋め尽くして傷をふさぎます。これが、瘢痕化です。
血流が乏しいため白っぽい外観があります。
瘢痕部位は、砂漠に例えることができます。
木を植えても水分がたりず枯れてしまう。
瘢痕部位に植毛しても血流が乏しく、毛包は生着しにくい傾向があります。
もちろん、程度にもよりますので、すべてが適応が無いというわけではありません。
血液供給がある程度保たれている場合は生着する可能性があります。
ただし、やってみないとわかりませんが、生着率は低いことが予想され、事前によく医師の説明を理解しておく必要があります。
自毛植毛を受けるのに慎重になるべき人(期待値の不一致)
次に、自毛植毛において患者の期待値と医療の現実のズレ(GAP3)が埋められないのなら、無理に手術を受けない方が良いケースです。
まず、ここで確認したいのは、次の2人の医師がいるとしたら、どちらが良い医師と思いますか?
医師A 患者の期待や望みをほとんど受け入れて、最善を尽くす
医師B 何が可能で、何が不可能かをはっきり伝えて患者の将来にわたっての満足を追求する治療を行う
この2つの異なる医師像を念頭に以後をお読みください。
自毛植毛を受けるのに慎重になるべき人を挙げてみます。共通するのは、高すぎる期待値です。
- フィナステリドまたはデュタステリドを飲みたがらない人
- ハミルトン・ノーウッド分類のVI型、VII型
- 期待値が高すぎる人
フィナステリドまたはデュタステリドを飲みたがらない人
「自毛植毛で、薄毛から卒業できる、だからもうAGAの薬は使わない。」と強い信念を持っている人が自毛植毛を受けようとしているとします。
A先生は、患者さんの望みを受け入れますので、彼の考えを強くは否定しません。
実際、自毛植毛術を受けて、1年後、彼は望みの髪を手に入れて、AGA薬を飲む面倒も無くなり、楽しい生活を謳歌できるようになりました。
でも、ちょっと待ってください。
AGAは進行性の病気ですよね。
5年後、案の定、植毛した部位の後ろ側に頭皮が透けて見えだし、10年後には、植毛部位が黒々と離れ小島のように残っている。
これは不幸な話です。
B先生なら、フィナステリドまたはデュタステリドを飲み続けないなら、自毛植毛はしない方が良いときっぱり言います。
言い換えると、フィナステリドまたはデュタステリドを飲み続けるという約束のうえで、自毛植毛を引き受けるでしょう。
ハミルトン・ノーウッド分類のVI型、VII型


ハミルトン・ノーウッド分類のVI型とVII型というと、生え際から前頭部、頭頂部にかけて薄毛がつながり、毛がない状態です。
言い換えると、後頭部と側頭部にしか毛が残っていない。
植毛が必要な面積が広すぎて、グラフトがどうしても足りません。
なので、悩みが深いのは重々承知しておりますが、頭皮が見えなくなるような結果は期待できないのです。
B先生なら、この事実をはっきりと伝えます。
A先生は、できるだけ期待に応えるべく、1回目から3000株のようなメガセッションを行い、2回目、3回目の植毛も行うかもしれません。
少し計算をしてみましょう。
後頭部の縦8cm、横20cmのエリアの毛をすべて採取すると、毛穴の密度を70株/cm2として
8×20×70=11,200(株)
側頭部からもすべての毛を採取すると、正確な数字はわかりませんが側頭部は後頭部よりも狭く、後頭部の半分として計算し、合わせると
11,200+11,200/2=16,800(株)
くらいは取れるでしょう。
日本人の頭皮の面積はわかっていて、平均約580cm2です※。
頭皮全体に薄毛とわからないギリギリの密度である30株/cm2で均等に植えるとして、
580×30=17,400(株)
が必要になります。
仮定の多い単純計算ですが、足りません。
実際は、ドナーロスや脱落する毛もありますので、30株/cm2は達成困難です。
うまくいっても、頭全体が頭皮の見える薄毛になります。
しかし、それでも良いから、せめておでこがあるように植毛してほしいというお気持ちで臨まれるのであれば、期待と現実が一致しますので、自毛植毛を受けていただいても後悔が生まれることはないのかなと思います。
期待値が高すぎる人
私も薄毛に悩んで30年なのでよくわかります。
「とにかく、頭皮が見えないようにたくさん植えて欲しい」
「センター分けができるようにしてほしい」
「生え際を2cmくらい下げておでこを狭くしたい」
「M字ハゲで苦しんできたのでM字は消してほしい」
さまざまな期待や希望が湧いてきます。
ネットでビフォーアフターの写真を見て想像を膨らませます。
100万円を超える高額なお金を使うからと思うと、期待値が否応なく上がります。
A先生は、できるだけ患者の要望を実現しようとがんばります。
でも、ちょっと待ってください。
自然な髪にはルールがありましたね。
髪編でまとめた「自毛植毛 髪のルール」を再掲します。
自毛植毛 髪のルール
- ルール1:ヘアーフロー
- 自分の髪の毛の流れ(⇦残っている毛の流れから知る)を再現すべし
- ルール2:最前列付近は濃くしない
- 最前列付近には1本毛、または細い毛を選んで生え際を再現すべし
- ルール3:密度30/cm2ルール
- 1回の植毛における毛の密度は30/cm2をベースにして、状況に応じて増やす
- ルール4:生え際を下げすぎるな
- 自分のもともとの生え際をベースにデザインする
- ルール5:生え際ライン
- 自然なラインとM字は残す
このルールを無視して、あなたの希望通りの植毛をすると、1年後は生えた喜びが勝るかもしれませんが、時間が経つにつれ、髪の不自然さが気になり始めます。
B先生は、あらかじめ、そのことを見越して、
「限られた後ろ髪を使って、できるだけ自然にあなたの髪を再現することを最優先しましょう。そのためには、希望どおりではありませんが、ルールに従ったデザインが大切なんです」
と言ってくれるでしょう。
この希望と現実のすり合わせがきわめて重要で、このすりあわせがうまくいかないと、後悔が生まれるリスクがあり、自毛植毛を受けるのに慎重になる必要があるのです。
なぜ適応のない人を見抜けないことが起こりうる?
昔の外科はガンを見たら、すぐ切ってしまおうというノリでした。
今は違う。
今は、放射線療法や化学療法など複数の治療があり、他の治療と組み合わせて手術も行われる。集学的治療といいます。
AGAの世界に限らず医師はへたをすると自分の得意分野で勝負してしまう傾向があります。
自毛移植に特化したクリニックは、特に経験の浅い医師は、薄毛を見たら自毛移植で治してやろうと意気込んでしまう。
でも、薄毛の治療は、やはり医療のひとつですから、その方の薄毛を総合的に正しく診断して、自毛植毛に限定せず適した治療を選んでいくという医師としては当たり前の姿勢が必要です。
具体的には、詳しい問診やマイクロスコープを用いた頭皮と毛根の観察を丁寧に行い診断を正しく行うことは必須でしょう。
自毛植毛の適応がない場合は、その理由とともに、「ない」とはっきり伝えることがた正しい医師の役目です。
頭頂部は、フィナステリドまたはデュタステリドで良くなる可能性があるので、まず薬の効果を見ましょうと伝えるのは当然のことです。
自毛植毛を得意とする医師も、自毛植毛を修行中の医師も、薄毛の人を前にしたら、自毛植毛だけで勝負するのではなく、まず、問診、診察、病気についての説明、治療の選択肢、治療についての説明という医療では当たり前の手順を踏み、トータルな薄毛治療を推進していけば、後悔する人を減らすことができるのではないでしょうか。
そして、B先生のように、「患者の将来にわたっての満足を追求する治療を行う」のが理想です。








