このブログを読めば、自毛植毛における採取率と生着率の本当の意味がわかり、技術の高い医師を見抜く軸ができます
このブログは年間800件の手術をこなす外科医によるアフィリエイトブログです。医師と患者の立場からAGA治療の正しい情報を追求していきます。
黒髪先生自毛植毛は、必ず自分の毛の一部をロスしてしまいます。



毛のロスは、2つのシーンで起こります。



ひとつは、後ろ髪から毛を採取するときにロスします。



ふたつめは、移植した毛の一部は生着せず脱落しロスします。



1000株の毛根にアプローチするとして、採取率90%、生着率90%と仮定すると、1000×0.9×0.9=810と単純計算して、190本ロスして810本だけ生えてくるということになります。



2割ロスするということですね。



その通りです。90%というのは悪くない数字なのですが、2か所でロスするため約20%ロスになってしまうのです。



採取率と生着率を高めるための術式や器具が進歩して、今は採取率と生着率は良くなってきています。



しかし、いまでも人の手による手技であるため、執刀医の技術レベルが採取率と生着率に大きく影響します。



避けなければならないのは、採取率80%を下回るような明らかに技術の未熟な手術を受けてしまうことです。



家電のように医師の採取率と生着率などのスペックが名札に記載されていて、スペックに応じて値段が違えば選びやすいのですが。



アメリカや中国は医師により値段が違いますが、日本は自由診療でも同じクリニックの中では同じ値段です。



つまり、医師のスペックは治療費に反映されていません。



目の前の執刀医の本当の技量を知ることはほとんど不可能です。



医師の技量が十分わからないまま手術を受けてしまうことが多いことが、パート1で述べたGAP2(患者の希望と医療のGAP)のひとつです。



ホームページの数字は信じていいのですか?



難しい質問ですね。



まず自分でできることとして、事前に採取率と生着率についてちゃんと理解しておけば、技術レベルの低い手術を避ける力になるでしょう。
採取率とは?
言葉は難しそうな響きがありますが、要は、切り取った毛根のうち、切断されずに採取できた毛根、つまり、植毛に使える毛根の%です。
切断率は、逆に、ダメージがあり植毛に使えない%です。
採取率+切断率=100%
です。
100本の毛根のうち、10本の毛根が切断されたら、採取率90%、切断率10%になります。
一般に、
採取率80%以上が「Success」です。
90%以上で「Very Good」
95%以上になると「神業」
こんなイメージです。
術式で違う採取率:FUT vs FUE
毛根を採取する方法は、FUTとFUEがあります。
世界的には、患者のニーズに応じて使い分けるクリニックが多いです。
それぞれを、ひとことで説明すると、
FUT
後頭部の頭皮を1~2cm×20cm くらいの細い皮膚切片(Strip)に切り出し、そこから実体顕微鏡下で株分けする
FUE
電動パンチで、一株ずつ切り出す
それぞれメリットとデメリットがあり、現在の日本では、苦痛の少ないFUEが主流になっていますが、こと採取率に限って言えば、FUTの方が確実性が高いのです。
採取率に関して次のことを頭に入れる必要があります。
FUTが安定的に高い(95~99%、術者による)
FUEは術者による違いが大きい
FUEは、道具や医師の技術が向上したとはいえ、ブラインド操作(盲目的操作)であるため、どうしても医師の経験と技術がものを言います。
つまり、技術の高い医師がやれば、95%以上も可能でFUTと遜色がなくなりますが、低い医師がやれば、目も当てられない採取率になる可能性があります。
一方、FUTは皮膚を切るときに切断される毛根はごくわずかで、株分けは実体顕微鏡下で行いますので、そこで毛根を切断することはほとんどありません。
つまり、FUTの採取率は、医師の技術が低いからと言って採取率が低くなるということはないのです。
その代わり、FUTは医師の技術が低いと、苦痛が大きくなり、傷痕も大きくなります。
今の日本の現状では、患者の苦痛が少ないことを優先して、FUEを行うクリニックが多いですので、特に採取率に関して、よく話し合っておくことが重要です。
薄毛の範囲が広く、多くの株数を必要とするなら、FUTの高い採取率は有利になります。
術式の詳細は、下記ブログをご参考ください。


生着率とは?
生着率は、植毛した毛が生き残り、毛を生やす割合です。
100本植えて、90本が生き残り毛を生やしたら、生着率90%となります。
では、生着率に影響を及ぼす因子って何かわかりますか?
いろいろあります。
- 医師の技量
- 一定の適度な深さ
- 手技の速さ
- アシスタント(看護師)の技量
- 植毛密度
- 高すぎると生着率低下
- 採取した株の状態
- ダメージが少ない
- 採取してから植毛するまでの時間
- 採取した保存液の種類
- 移植する頭皮の状態
生着率にいちばん影響するのは、医師の技量 であることは疑問の余地はないでしょう。
❷、❸、❹、❺も、つまるところ医師の技量次第です。❷のアシスタント教育は医師がしますので。
医師の技量
なぜ医師の技量が大きく生着率に影響するのでしょう?
次のイラストを見てください。


皮膚って、深いところに太い血管網があって、垂直に交通枝が立ち上がり、表層の血管網と交通して、3次元的な構築をつくっています。
毛根は、イラストで示す深さに存在し、毛を作る毛乳頭は主に深部血管網から枝が出て栄養されています。
植毛するために、人工的な毛穴をつくります。英語でslitといいます。
毛穴を作るためには、穴をあける必要があることは当然ですよね。
細いメスで切り込みを入れる「ラインスリット」と電動パンチで細くくり抜く「ホールスリット」があり、一長一短がありますが、共通して問題になるのは、
穴の深さ
なのです。
深すぎると、この深部血管網を切ってしまい虚血障害をきたし生着率低下につながります。
浅いと、植毛しても飛び出してしまい生着しにくいうえ、なんとか生着してもぶつぶつした毛穴が目立ってしまいます。
ということは、深部血管網を傷つけず十分な深さの毛穴を作らないといけない わけです。
針に糸を通すような微細な手技ですね。
しかも、1000株植えるとしたら、1000回とも適切な深さにする必要があります。
しかも、同じ方向ではなく、自然な髪をつくるためには、毛流れに合わせて、毛穴の向きや角度を変化させながら行う必要があります。
これをスピーディに行うわけですから、たいへんな技術であり、技術の差が出てしまうことがよくわかりますね。
アシスタント(看護師)の技量
どんな手術でも医師を介助するアシスタントの技量は、手術のQualityに影響します。
医師も人間。介助が良いと、波に乗れて実力を発揮できるのです。
特に、自毛植毛は、1000株なら、1000回同じことを正確に繰り返す手術なので、波に乗れることが重要です。
自毛植毛では、看護師の役割は、特に大きいと言わざるを得ません。
自毛手術は、大きく分けると3つの工程に分けられます。
- 採取
- 株分け
- 植毛
採取と植毛は医師が行い看護師は介助になりますが、株分けでは看護師が主役になるクリニックがほとんどです。
株分けは実体顕微鏡で行います。
行うことは
- 切断された株を除外する
- 1本毛、2本毛、3本毛に分ける
- 時に、2本毛と3本毛を1本毛に分離する
- 毛根周囲の組織を取り除き大きさをそろえる
こうみていくと、株分けの作業は、料理の下ごしらえのように、すべての株を植毛しやすい状態にする作業です。
当然、生着率に影響します。
アシスタント(看護師)の役割の重大性がよくわかりますね。
植毛密度
植毛する毛穴が多すぎると、生着率が下がるってご存じでしたか?
経験的に、
30株/cm2
が最適な植毛密度とされています。
これには、少数例の検討ながら根拠も出てきています。
20株/cm2と30株/cm2では生着率は90%台だったが、40株/cm2、50株/cm2だと生着率は70%台に落ちたというものです※。
もちろん、高い密度になるほど濃い髪になるわけですが、もし濃くしたいという方も、1回で濃くしようとせず、まずは30株/cm2で臨み、2回目のオペで増やす方が生着率の面では無駄が少ないということを知っておいて損はないでしょう。
採取した株の状態
実は、株のダメージは、2つの工程で起こりえます。
- 採取するとき
- 株分けするとき
採取するときに切断してしまった株は、植毛には使いません。これは採取率に影響します。
切断には至らないが、毛根のギリギリのところで切れていると多少のダメージを負うことはあります。
実際、毛根周囲に余分な組織が残っている株の方が生着率は良いとされます。
つまり、毛根全周にのりしろがある切断により得られた株が、確実な株と言えます。
もうひとつの株分けは、前述したように採取した株を植毛しやすいように調整する作業です。
実体顕微鏡で行いますので、熟練すれば株を傷つけることはありませんが、毛根は柔らかい組織ですので、経験が十分でない人が行うと傷つけることがあります。
採取してから植毛するまでの時間
当たり前のことですが、どんな器官や組織も血液から酸素と栄養をもらわないと細胞が弱ってしまい、ついには壊死します。
つまり、株を採取してから植毛するまでの時間が長くなるほど酸素と栄養が途絶える時間が長くなりますので、株のダメージは大きくなります。
ただし、ご安心を。
最近では、保存液が良くなり、ある程度の時間内であればダメージが進みにくくなっていますので、生着率におよぼす影響は、以前ほどは大きくありません。
採取した保存液の種類
保存液が悪いと、血流の途絶えた株は細胞が傷み劣化していきます。
最近の良い保存液を使えば、この問題はあまり懸念には及びません。
移植する頭皮の状態
頭皮には個性があります。
脂っぽい/乾いている
硬い/柔らかい
薄い/厚い
AGAの人の頭皮は、脂っぽくて、硬くて、薄い傾向があります。
また、AGAの人の頭皮は、慢性炎症が起きているとされています。
でも、自毛移植の対象は、ほとんどがAGAによる薄毛であり、実際には多くの人で高い生着率が得られています。
なので、AGAの人の頭皮の特徴は、生着率を下げる原因にはなっていないようです。
明らかに、生着率を下げるのは、皮膚に外傷やヤケドによる瘢痕がある場合です。
その理由は、瘢痕部位は線維化しており血管が乏しいからです。
植えた毛が生着するためには、毛根がホストから酸素と栄養をもらうための血管再生が起きる必要があります。
瘢痕化した皮膚は、この血管再生がうまくいきにくく生着率が低くなります。
このような瘢痕化のような頭皮の問題がないにもかかわらず、また植毛はうまくいったにもかかわらず、ごく一部の人は、とても生着率が低いと言われています。
頻度は1%未満です。
頭皮側の問題としては、まだわかっていないことがあるという印象です。
採取率と生着率の高い医師に出会うには?
医師の採取率と生着率を知るのは難しいと言わざるを得ません。
パート1でお伝えしたGAP2(患者の希望と医療のGAP:基本技術)にあたります。
正確な手術成績というのは、
調査期間:○○年○○月○○日~△△年△△月△△日
対象:AGA患者○○人(男性〇人、女性〇人)
執刀医:○○先生
というふうに、執刀医一人一人について調査期間を定めて、ある程度の多数例の成績を調査する必要があります。
現実には、かなりたいへんな作業になり、手術業務自体をヘビーにしてしまいます。
学会発表や論文作成を行う場合は、頑張る場合もあるのですが、いまや採取率と生着率だけでは演題にはしにくいため、ほとんど調査しません。
採取率や生着率の記載を目にすることはありますが、このような調査期間や症例数まで記載はされていません。
口コミも正確な数字を知るには足りません。
数字はわからないことを前提に技術の高い医師を見つけないといけないわけです。
どうすればよいか?
我々にできることは次の3つと思います。
- 自毛植毛についての正しい知識を増やし、治療を受ける側としての軸を持つ
- 採取率や生着率を高めるためのクリニックの取り組みに注目する
- 実際に執刀医との話の中で理解する
まず、あたりまえのことかもしれませんが正しい情報をもっていないと良い選択はできません。
このブログでも、私は植毛医ではないですが、マイクロサージャリー(顕微鏡を用いた手術)を多数行っている外科医の目から見た自毛植毛の情報を発信していきますので参考にしていただければと思います。
各クリニックのホームページやブログやYouTubeに目を通して、代表医師の採取率や生着率を高める取り組みやこだわりに注目しましょう。
ただし、それにも必ず医療法の範囲内での宣伝要素がありますので、どれもいいことが書いてあり、情報に振り回されることが多いと思います。
特に、YouTubeは、露出が得意な医師が良く見える効果があり、冷静な判断を妨げる可能性があります。
ネット情報に振り回されないためには、宣伝に踊らされず正しい情報を見抜く目利き力が必要です。
そのためには、常に正しい情報に触れ、受ける側としての考え方の軸を養っていきましょう。
最終的には、カウンセラーではなく、必ず執刀医と話をしてください。
執刀医との話の中で、採取率と生着率に関する考え方を直接聞いてから、最終的に決めても遅くないです。
このブログは、アフィリエイトブログですが、医師としての倫理観の元、できるだけ正しい情報を提供してまいります。








